雨降り王子は、触りたい。



「そうです!昨日はご来店ありがとうございましたっ」



…かわいい。
これはいわゆる、萌え袖っていうやつだ。

可愛い彼女にはしっくりくるポーズだけど…
私がやったら、違和感しかないだろうな。

なんて、思っていると。

耳を疑うような言葉が鼓膜に触れた。



「本当は留衣くんに会いたかったんだけど、あなたにも話あるから、ちょうどよかったです!」

「え……?」



私に話…?

怪訝な視線を向けるものの、彼女は一切笑顔を崩さない。

その表情に引っかかりを感じる。

だけど、



「どこか座れるところ行きませんっ?」



ずいっと迫られるとなんだか断れなくて。



「う、うん……」



私は流されるように、頷いた。


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