雨降り王子は、触りたい。
なんで私、こんなに疑心暗鬼になっているんだろう。
私がコーラを持つ手に、ギュッと力を入れた時。
「……留衣くんのことね」
萌絵ちゃんが、唐突に話し始めた。
「ずっと、探してんだ。今までどこの高校かとか、全然わかんなくて」
視線を上げるとそこには、相変わらず笑顔を崩さない萌絵ちゃんがいる。
「それで昨日……制服見てやっとわかったんだぁ」
……萌絵ちゃんに違和感を感じる理由、わかったかも。
ずっと笑顔を張り付けている彼女の、目。
目だけ、笑ってないんだ。
その瞳の色は真夜中みたいな、黒。
星ひとつない空の色をした瞳は、見ていると呑まれてしまいそうな気がして。
ゾクリと、背中に冷たいものが走った。