雨降り王子は、触りたい。



「絃ちゃんさ。留衣くんと付き合ってるの?」

「い、いや…」

「ふふ、そりゃそうよね」



そう言うと萌絵ちゃんはアップルパイを丁寧に紙で包み、

─────バリッ

これまでの上品な所作とは打って変わって、豪快にかぶりついた。

そして口の横についたソースを舌で拭い取ると。



「だって留衣くん、女に触れないもんね」



萌絵ちゃんは、はじめて目を細めて笑った。



─────ドクン。

自分の心臓が大きく動いたのを感じる。

そして。



「三咲の体質…知ってるんだ……」



私は無意識に、零していた。

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