雨降り王子は、触りたい。



"好き"って気持ちがどんなものか、今までは全然知らなくて。

だけど、それがどんなものかわかる今。



……だめだ、ほんとに苦しい。



話せて嬉しいとか、一緒にいて楽しいとか、会えなくて寂しいとか。

そんな特別な感情を、三咲が……。



「……ほんとは私も、好きだったんだけどね」



萌絵ちゃんの話がもう、頭に入ってこない。



「びっくりしちゃったからさぁ」



入ってこなかった───はずなのなのに。



「いきなり……キス、なんて」



………キス?

ピクリ。体が反応する。



"好き"って気持ちだけでいっぱいいっぱいで。

その先のことなんて考える余裕のない私に、その言葉はずっしりと、重くのしかかった。

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