雨降り王子は、触りたい。

12 : なんで避けんの？

かけられた声に、聞こえないふりをして。

それ以降三咲と会うことがないまま、放課後になった。



ほとんどの生徒がいなくなった教室。

なんだか動く気になれなくて、窓から外を見下ろす。

いつもは一目散にする帰り支度だってまだしていない。



目に映るのは、生徒が次々と通り過ぎていく校門。

髪色が自由なだけあって、その光景はカラフルだ。



─────ドキッ。

金髪が通るたびに、心臓が反応してしまう。

もし三咲を見つけたとしても、無視してしまった後だから気まずいし、声を掛けられる距離でもないのに。



「絃、帰んないのぉ？」



のえるの声が降ってきた。



「んー…」



私は歯切れの悪い返事を落とす。