雨降り王子は、触りたい。



萌絵ちゃんは通り過ぎようとした三咲の前に立ちはだかって。

しばらくすると、2人は一緒に姿を消した。



『とにかく、これからは私が留衣くんのそばにいる。体質も、なおす。』



……そっか。

萌絵ちゃん、"そばにいる"って言ってたもん。
そりゃ会う約束くらいしてるよね。

ズキンズキン。胸に黒い感情が込み上げる。

痛い。痛すぎるよ……。



じっとしていると目の前まで真っ暗になってしまいそうな気がして。

私はどうにか動こうと、無造作に荷物をリュックに詰め込んだ。

すると、リュックの内ポケットで何かが光ったのが目に入る。



──────私のお守り。

三咲からもらった、ヘアクリップだ。


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