雨降り王子は、触りたい。
昼休み、トイレからの帰り。
頭に浮かぶ金髪頭を打ち消すように、ハンカチをポケットに押し込んだ、その時だった。
「……赤髪」
─────三咲の声だ。
久しぶりに聞いた声に、きゅっと、一瞬心臓が止まった気がする。
だけど、振り向くことはできない。
今更どんな顔を向けたらいいのかわからないし、三咲の表情を見るのが怖い。
「な、なに?」
いつもどうやって会話してたっけ。
緊張でそんなことすらわからなくて、私はただただ、俯く。