雨降り王子は、触りたい。
「あの日、勝手に帰ってごめん」
あの日─────それはきっと、一緒にラヴ・アラモードに行った日のこと。
萌絵ちゃんを見て涙を流した三咲は、たしかに私を置き去りにしたけれど。
私はそんなこと、全く怒ってない。
「───っ」
怒ってないよって。
そのくらい素直に伝えられたらいいのに。
それを口に出すことは、できなかった。
「……じゃ」
三咲はそう言うと、かげりのある表情を残して去って行った。