雨降り王子は、触りたい。



その男を目にした瞬間、私の心臓は止まった。



「な、なんでここに……っ」

「……チカが、ここに雨宮いるって」



身体が、みるみる熱くなっていく。



「はぁー。疲れた」

「髪、ぐちゃぐちゃ…」

「あー、走ったから」



……走ってきてくれたんだ。

ドクドクと、心臓が勢いよく血を巡らせる。

目の前に三咲がいる。本物の三咲が……。



自分が避けていたくせに、何度も頭の中に浮かべて。

会いたくて仕方なかった人。



髪を整える三咲をじっと見つめる。

すると。

─────じわり。

私の瞳には、透明の液体が浮かんだ。


< 349 / 451 >

この作品をシェア

pagetop