雨降り王子は、触りたい。
その男を目にした瞬間、私の心臓は止まった。
「な、なんでここに……っ」
「……チカが、ここに雨宮いるって」
身体が、みるみる熱くなっていく。
「はぁー。疲れた」
「髪、ぐちゃぐちゃ…」
「あー、走ったから」
……走ってきてくれたんだ。
ドクドクと、心臓が勢いよく血を巡らせる。
目の前に三咲がいる。本物の三咲が……。
自分が避けていたくせに、何度も頭の中に浮かべて。
会いたくて仕方なかった人。
髪を整える三咲をじっと見つめる。
すると。
─────じわり。
私の瞳には、透明の液体が浮かんだ。