雨降り王子は、触りたい。



「………は?」



目を丸くして、肩をびくっと揺らした三咲。
私はそのまま、静止する。



「………なんでだろ」



なんで涙が出るのか、自分でもわからない。

ただ、今、悲しいって感情はなくて。

じゃあこれは、嬉し泣き……?



「……とりあえず出るぞ」



三咲の声がして、私は慌てて涙を拭った。

そして席を立とうと机に手をつくと、あるものが目に入る。



「あ……ちょっと待って」



私は、市川特製ドリンクに口をつけた。

一口だけ飲んだそのドリンクは、意外と飲みやすくて。

想像とは違って、爽やかな味がした。


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