雨降り王子は、触りたい。



「み、さき…」



驚きのあまり、ピタリと涙は止まった。

腰に回された腕、触れそうな耳と耳。

三咲はぎゅうっと、私を抱きしめている。



なに、これ……死ぬ…………!

ドキドキしすぎて死ぬ。
息できなくて、死ぬ……!



身体の密着しているところが、火傷したみたいにじんじんと熱い。

呼吸をするのがやっとの私に、三咲は言った。



「こっち見るなよ。ださいから」



すると次の瞬間。
じんわりと肩が濡れるのを感じた。

……そうだ。三咲は女子に触れたら反射的に涙が出るわけで。

三咲は私の肩に、ポツポツと小さな雨を降らせる。


< 355 / 451 >

この作品をシェア

pagetop