雨降り王子は、触りたい。



私は勇気を振り絞って、口を開く。



「……萌絵ちゃんと、付き合ってるの?」



もし付き合っていないなら、今度こそ素直になりたい────。

ぎゅうっと目をつむり、三咲の返答を待つ。

すると。



「………はぁ?」



耳元で、気の抜けるような声が聞こえた。

そして拘束される力が弱まって。

不機嫌そうな三咲の顔が、こちらを向いた。









あの日、雨宮とラヴ・アラモードへ行った日。

俺は気付いていた。雨宮がヘアクリップを付けてきてくれたことに。

だけど“似合う"って一言が上手く言えなくて。

そうこうしているうちに、なぜか目の前にあの女が現れたんだ。


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