雨降り王子は、触りたい。
どくり。
俺の頭を支配する名前に、心臓が反応した。
っていうか。なんでチカが雨宮と……
『学校近くのファミレス。俺は用事あって店出たからさ。今絃ちゃん1人なんだけど、』
「行くわ」
自分でもびっくりするくらい無意識のうちに、即答していた。
電話を切ってからも動きを止めることなく、上着を羽織って家を出て。
1回帰ったくせに、また電車に乗って通学路を歩く。
変なの。俺ってこんな行動力あったっけ。
店に入ると、綺麗な赤色の髪はすぐに目についた。
どくどくと、昨日までは死んでいた心臓が活発に動く。
「な、なんでここに……っ」
「……チカが、ここに雨宮いるって」