雨降り王子は、触りたい。
私は疑るような目で市川を見る。
市川はゆるっとした黒のシャツに黒のスキニーを合わせていて、想像通りの私服姿だ。
いつも以上にチャラさが増している。
到底高校生には見えない。
「……でもさ」
「ん?」
「バイト中に、邪魔じゃないかな?」
単純な疑問だった。
「……まぁ、なんとかなるでしょ」
ほんとにこの人は、マイペースというか。
だけどいつも、気付けば市川の速度に巻き込まれてる気がする。
とにかく私は、三咲が萌絵ちゃんから解放されたらなんでもいいんだけど……。
「お、もうすぐだね」
「そうだね」