雨降り王子は、触りたい。
1ー1と記された教室の扉を開けると刹那、びっくり箱のように教室から人が飛び出してきた。
その人物に思い切り抱きつかれ、私は目を丸くする。
…だけどすぐに正体はわかった。
綺麗なつむじが丸見えの女の子。
小柄で甘い香り。
こんなことするのは、1人しかいない。
「…のえる」
「えへ」
名前を呼ぶと、その人物は私の体に埋めていた顔を上げ、満面の笑みを露わにする。
「おはよぉ、絃!」
「おはよ」
後藤 のえる。私の、中学からの親友だ。