雨降り王子は、触りたい。
重なるブレザーの裾に、ドキッと胸が鳴る─────と。
「……ぷっ」
突然吹き出した三咲。
私は反射的に三咲の方へと顔を向けた。
「?」
いきなり、何?
首を傾けると、三咲はくつくつと喉を鳴らす。
「階段登る音、激しすぎ」
「なっ!」
「わざわざ走らなくても」
それは、三咲にはやく会いたかったからで……!
私は拗ねたフリをして、ぷいっとそっぽを向く。
ほんとは赤くなった顔、見られたくないだけだけど。
しばらく三咲は笑っていて。
ようやく落ち着いたかと思うと、それまでとは全然違う真面目なトーンで言葉を落とした。
「……あのさ」