雨降り王子は、触りたい。

「ねぇ三咲───」



ブーブーブー……

私の言葉を遮ったのは、スマホのバイブ音。

響き続けるその音に、気付かないふりはできなかった。




もどかしい気持ちでポケットからそれを取り出すと、表示されるのは着信画面。

【市川　雅近】

その名前に、思わず舌打ちをしそうになる。

なんなのよ、もう。こんなタイミングで……！

私は繋がっていた三咲の手を離し、通話ボタンをタップした。



『もしもし絃ちゃん？この前の話だけど〜』

「今取り込み中なんですけ────」



文句のひとつでも言ってやろう。
そう思ったのに。

するり、私の手からスマホは抜き取られて。



────プツン。

市川からの電話は、三咲に切られてしまった。