雨降り王子は、触りたい。
「……俺が、言い出したのに。体質なおったら言うって」
しっかりと三咲に掴まれている、私の肩。
いつもなら触れられるとドキドキするのに。
もうそれどころじゃない。
私は目を見開いたまま、放心状態。
目の前の三咲は、のぼせたような顔をしている。
「ごめん。だけどもう限界」
そんな声が、小さく聞こえた。
限界……そんなの。こっちのセリフだよ。
っていうか限界超えてるよ。
これ以上、無理だよ。
いっぱいいっぱいの私は、頭が真っ白になって。
無意識のうちに立ち上がっていて。
「………雨宮?」
三咲の声を背中に受けたものの、答える余裕なんてあるはずがなくて。
その場から全力疾走で、立ち去った。