雨降り王子は、触りたい。



学校から、駅まで。
駅から、家まで。

とにかく走った。

冷たい風が吹き付けてきたって、私の身体の熱が冷えることはなかった。



ベッドに飛び込むと枕に自分の顔を埋めて、うつ伏せの状態で静止。

頭の中ではずっと、さっきの映像が流れている。

肩を掴む細い指、徐々に近付いてきた綺麗な顔、メガネの奥の真っ直ぐな瞳……熱を持った唇。

思い出すと、胸が焼け焦げてしまいそう。



「………キス。しちゃった」



思わず口から出たその単語の破壊力は、相当なものだった。



「〜〜〜〜っっっ」



声にならない叫びが枕に吸い込まれる。



気持ちが溢れて足をバタバタさせていると。

なんだか頭だけは、徐々に冷静さを取り戻していって。

動きはどんどん減速し、ついに止まった。


< 418 / 451 >

この作品をシェア

pagetop