雨降り王子は、触りたい。
学校から、駅まで。
駅から、家まで。
とにかく走った。
冷たい風が吹き付けてきたって、私の身体の熱が冷えることはなかった。
ベッドに飛び込むと枕に自分の顔を埋めて、うつ伏せの状態で静止。
頭の中ではずっと、さっきの映像が流れている。
肩を掴む細い指、徐々に近付いてきた綺麗な顔、メガネの奥の真っ直ぐな瞳……熱を持った唇。
思い出すと、胸が焼け焦げてしまいそう。
「………キス。しちゃった」
思わず口から出たその単語の破壊力は、相当なものだった。
「〜〜〜〜っっっ」
声にならない叫びが枕に吸い込まれる。
気持ちが溢れて足をバタバタさせていると。
なんだか頭だけは、徐々に冷静さを取り戻していって。
動きはどんどん減速し、ついに止まった。