雨降り王子は、触りたい。



ハーフアップにした髪にはヘアクリップを付けて。

いざ、屋上へ!



ふわふわと浮いてしまいそうな足取りで、その場所へと向かう。

今日も三咲は、屋上の前の階段に座っていた。



「……おー」



三咲が少し照れ臭そうに言うものだから、なんだかこっちまで恥ずかしさが込み上げる。



「お、おう」



そう言って隣に腰を下ろすと、三咲の形のいい唇が目に入って。

この口と、私─────なんて、脳がトリップしてしまいそうになる。

だめ、だめ。意識をしっかり持て、私。

膨らみかけていた妄想を掻き消すようにブンブンと首を振ると。



──────きゅ。

三咲の手が、私の手を包み込んだ。


< 422 / 451 >

この作品をシェア

pagetop