雨降り王子は、触りたい。
三咲が歩き出すと、私は1歩後ろを同じように歩いて行く。
「…まぁ、女は口軽いか。」
「だから決めつけないでって。」
「はいはい。」
─────王子と呼ばれて、女嫌い。
そんな人と秘密の共有なんて、まるで本当に少女漫画の世界みたいな出来事だ。
…っていうか、そうだとしたらヒロインは私?
ドレス姿の自分を想像して、私は苦笑いを浮かべた。
……………ないないない。
頭上に広がる想像を、手でパタパタと振り払う。
一瞬立ち止まったせいで、三咲との間には距離があって。
それを埋めるために、私は地面を蹴った。
……そんなこと、あるわけない。
小走りすると、髪が揺れる。
それは私の大好きな、だけどまるでヒロインっぽくない、奇抜な色をしている。