雨降り王子は、触りたい。
……隣のクラス、か。
自然と金髪の男の顔が思い浮かぶ。
『ねぇ絃、三咲くんといつ付き合ったのぉ?』
────のえるの言っていた話は、気にする必要ない。
だってそんなの、ただの噂なんだし。
『ずばり絃、三咲くんのこと好きぃ?』
…事実無根だし。
なんとなく緊張しながら、隣の教室のドアを開けた。
それはいつもよりズシっと重たく感じた。
「あ、絃ちゃんだー」
ドアの重さとは裏腹の、軽快な声が落ちてくる。
その声の持ち主は─────市川だ。