極上御曹司に見初められ、溺愛捕獲されました~一途な海運王の華麗なる結婚宣言~
 パステルイエローのひざ丈のワンピースにパールのネックレス。地方都市の結婚式場では華やかなほうだったとっておきの衣装は、この豪華なバンケットルームにはまったくふさわしくなかった。

 ちゃんと確認しなかったわたしが悪い。伝統あるセレブリティクイーン号をなめていると言われてもしょうがない。

「あら、ごめんなさい」

 うつむいていたわたしの肩に誰かがぶつかった。わたしを非難していた日本人女性の一人だった。

「あ……!」

 彼女が手にしていたグラスが傾き、わたしのワンピースの腰の部分が赤紫色に染まる。
 赤ワインだ。

「あまりに素朴なドレスで目に入らなかったわ」

 レモン色の生地に赤黒い染みが広がる。
 そんな場合ではないのに、染み抜きできないだろうなぁとぼんやり思った。

「そのままでは床も汚れてしまうわ。あなた、きちんとしたドレスに着替えていらしたら?」
「…………」

 日本語なので、外国人客には会話の意味はわからないだろう。けれど、わたしの服が汚れたことには気づいたようだ。まわりがざわざわしはじめる。
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