極上御曹司に見初められ、溺愛捕獲されました~一途な海運王の華麗なる結婚宣言~
 鞠香の両親は離婚し、鞠香自身は母親と一緒にイギリスから日本に帰国した。
 名字も変わり身を隠すように去ってしまったようで、俺には行方を追うことができなくなった。

『かわいそうなことだが、花野宮の娘はもうあきらめなさい』

 父は彼女の行き先を知っていたのかもしれない。けれど、俺には何も教えてくれなかった。

『僕はあきらめません』
『……まあ、好きにするといいい。私は今後この件には協力しない。おまえがあきらめないというのなら一人でなんとかするように』

 それからずっと行方不明になった鞠香を探し出し、憂いなく俺のもとに迎え入れるためにがんばってきた。
 海堂ホールディングスに入社してからも実力を示し発言力を増し、いずれはという既定路線だったとはいえ二十代のうちに副社長になった。

 鞠香の行方は少年時代の貧弱な人脈では当然見つからなかった。大人になってからも探しつづけたが、大っぴらにはしたくなかったので捜索は難航した。
 大袈裟にしたくなかったのは、鞠香がどんな境遇にいるかわからなかったからだ。もしひどい環境にいるのなら、鞠香に瑕疵をつけないようひそかに救い出したい。
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