極上御曹司に見初められ、溺愛捕獲されました~一途な海運王の華麗なる結婚宣言~
 将生もすでに気がついているのだろうか。鞠香が『マリカ』だということに。
 子供のころ乗船したセレブリティクイーンで仲良くなったあどけない少女。幼い将生も彼女を気に入って、いつも一緒にいた。

 突然胸の奥からどす黒いものが湧きあがって、俺は目を閉じた。
 この気持ちはなんだ?

 昔、将生とマリカが親しくしているのを見ても、まったく浮かばなかった感情。
 それから十数年、俺はずっと鞠香を探してはいたけれど、それは純粋無垢な天使を追い求めているような意識だった。年ごろになった鞠香にもう好きな男がいるかもしれないと焦ることもあったが、その感覚はどこか遠く、こんな苦い想いにはならなかった。

「これは、嫉妬か」

 これほど生々しく苦しい気持ちなど知らない。
 ほかの誰にも抱いたことはない。

 ウェルカムパーティーで大人の女性に成長した鞠香を見た時、喜びが胸にあふれた。
 光沢のある濃紺のイブニングドレスに着替えた鞠香を前にして、言葉を失った。あまりに美しく、手をふれてはいけないのではないかを感じるほど神々しかった。

 そしてあの夜、鞠香の体温を知った。
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