極上御曹司に見初められ、溺愛捕獲されました~一途な海運王の華麗なる結婚宣言~
 自分の内側で暗い感情を抑えこんでいた堤防が決壊する。

「鞠香、話がある」
「急にどうしたの? 翔一郎さん?」
「こっちに来い」

 細い腕をつかんで強引に将生から引き離す。
 あきれたように俺を見る将生の視線を無視して、俺は鞠香を物陰に連れていった。

 太い円柱とヤシの木やブーゲンビリアといった南国風の植栽で目隠しされた一角は、ささやかな休憩スペースになっている。プールの脇の奥まった場所にあり、ほとんど人が来ない。
 けれど、まったく来ないわけではない。扉や壁では区切られていないので人の声や気配は筒抜けだ。

「翔一郎さん、何かありました?」
「…………」

 入ってこようと思えば誰でも来られるその場所で。
 俺は無言のまま、鞠香を壁に押しつけた。

「何を……」

 俺の態度に違和感を感じたのだろう。抵抗しようとする鞠香を力で押さえつける。
 そして、無理やり唇を奪った。

「あっ……、んっ」

 柔らかい唇をむさぼるように喰らい、舌を差しこんで熱い口内を蹂躙する。
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