極上御曹司に見初められ、溺愛捕獲されました~一途な海運王の華麗なる結婚宣言~
 十代のころでも感じたことのない焦燥感がこみあげて、すぐにでも鞠香とつながりたくなる。

 なめらかな太ももをなで水着のボトムスの中に手を入れて、性急に事を運ぼうとしたその時。
 鞠香のすすり泣く声がした。

「鞠香……?」

 はっとして鞠香を見ると、彼女の大きな目に涙が浮かんでいる。
 透明なしずくが一筋頬を伝ってこぼれ落ちた。

「……っ!」

 全身からさーっと血の気が引くように感じた。鞠香を貪欲に求めていた指先が冷えて動かなくなる。

「鞠香……」

 彼女を呼ぶ声は、聞こえるかどうかわからないくらいのかすかなかすれ声にしかならなかった。

「しょ、翔一郎さん、ど、どうしてこんな、突然……」

 鞠香は肩を震わせてしゃくりあげている。

 俺は壁際のタオルラックに置いてあった新しいタオルを彼女の体にかけた。
 俺が暴いてしまった清らかな雪白の肌を大きめのバスタオルで包み、覆い隠す。

 鞠香の目もとの涙を指でぬぐうと、鞠香はそれでも嫌悪感を見せず、ややぼんやりした不思議そうな顔をしていた。
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