極上御曹司に見初められ、溺愛捕獲されました~一途な海運王の華麗なる結婚宣言~
「鞠香。きみの想いが追いついていないことはわかっている。きみが私を信頼してくれる日まで待っているから」

 その手が濡れた頬を包む。

「だから……」

 羽みたいな軽いキス。

「今はキスだけ許してほしい」
「……許してほしいって言う前にしてる……」

 矛盾した言葉と行動に、思わず笑ってしまった。
 翔一郎さんもほっとしたように表情を緩める。

「ちょっといい人かなって思ったけど……、やっぱり翔一郎さんは強引です」
「すまない」

 間近で見つめるヘーゼル色の瞳。
 ひどく整った翔一郎さんの顔がとけるようににじんで。
 また、口づけが降ってきた。

「まだ許してない……」
「うん。わかってる。キスだけ……だから」
「キス、だけ」

 お互いの言葉が意味をなさなくなる。
 翔一郎さんとわたしの唇から生まれる音が絡みあって、ただ熱いだけの吐息になる。

「鞠香……」

 深い、深い口づけ。

 水平線に沈む太陽の最後の光。世界が金色に輝くマジックアワー。
 その薄明の中に星くずが燦爛と輝く。

 わたしは夢中になって翔一郎さんにしがみついた。

「……翔一郎さん」
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