極上御曹司に見初められ、溺愛捕獲されました~一途な海運王の華麗なる結婚宣言~

 あたたかい……。
 ふかふかのソファー、翔一郎さんの胸、そしてなめらかなキャメルのブランケットに体を包みこまれる。
 屋外用のヒーターの熱がふんわりと漂って、熱源が赤い炎みたいにゆらゆらと揺らめく。

 早春の冷えた夜風さえ心地よく感じた。

「おもしろいですね。この映画、初めて観た」
「そうだな」

 わたしが小声でささやくと、翔一郎さんはわたしを見つめて、我慢できないとでもいうように素早く唇を盗む。

「翔一郎さん、だめです」
「……わかってる」

 ため息をついて少し体を離す彼。
 自分からだめだと言い出したのに、そのわずかな隙間がさみしかった。

 映画は古い時代の作品で、モノクロだけれど綺麗にリマスターされているらしい。おてんばな令嬢と職にあぶれた新聞記者のコミカルなラブストーリーだ。
 テンポのいい会話にくすくすと笑ったり、お互いが気になるけれど、なかなか素直になれない様子にきゅんとしたり。
 主役の二人は『婚前旅行』の目的地であるニューヨークに向かって旅していく。
< 155 / 252 >

この作品をシェア

pagetop