極上御曹司に見初められ、溺愛捕獲されました~一途な海運王の華麗なる結婚宣言~
 突然オリバーさんの態度が変わった。ずっと礼儀正しかったのに、乱暴な仕草で無理やり引っ張られる。
 いったいどういうこと?

「――山内さん!」

 助けを求めようと振り返った。けれど、誰もいない。
 さっきまでうしろにいたのに。山内さんはどこへ行ったの?

 山内さんだけではなく、周囲には人がいない。いつの間にか人けのない場所に来ていたのだ。
 オリバーさんはわたしの手をつかんだまま、奥まったところにある目立たない扉を開けた。

「やめて! 人を呼ぶわよ」

 オリバーさんの腕から逃れようともがくけれど、びくともしない。
 扉の中に入るとすぐに口を粘着テープでふさがれた。鼻は出ているので呼吸はできるが、息苦しい。
 何よりも怖かった。豹変したオリバーさん、そして消えた山内さん。助けてくれそうな人は見当たらない。
 足がすくむ。

「静かにしていれば丁寧に扱ってやるよ?」
「……!」

 冷たく笑う彼はさっきまでのオリバーさんではない。わたしは恐ろしくて、ただひたすらにうなずいた。
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