極上御曹司に見初められ、溺愛捕獲されました~一途な海運王の華麗なる結婚宣言~
 従業員用の通路だろうか。狭い廊下を少し行くと小部屋がいくつか並んでいた。そのうちの一つに、腕をつかまれたまま引きずりこまれる。

 タオルやテーブルクロスなどの布類が左右の棚に積まれていた。リネン類を保管する倉庫、リネン室のようだった。

「さて、しばらくここにいてもらうことになる。マリカはいい子にしていられるね?」
「…………」
「念のため逃げられないようにしておくか」

 豪華客船といえどもバックヤードは飾りけがなく、塩化ビニールの固い床に転がされる。
 体の上にのられて身動きできずにいる間に、口を覆っている粘着テープと同じもので両手両足も拘束されてしまった。

「…………」

 怖い。縛られた手足も、床に当たっている背中も痛い。
 ここで乱暴されるのか、それとも殺されてしまうのだろうか。

 何がなんだか状況がわからず恐怖に震えるわたしの隣に彼が座りこんだ。見せつけるように、わたしのショルダーバッグからスマートフォンを取り出し電源を切る。

「そう怯えなくてもいい。俺はカジノのディーラーじゃないが、犯罪者でもない。ただの乗客だ」
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