極上御曹司に見初められ、溺愛捕獲されました~一途な海運王の華麗なる結婚宣言~
 ただの乗客? こんなことをしている時点ですでに犯罪者なのではないだろうか。

「これでもとある会社の役員なんだぜ。ただ運悪くギャンブルで金をすってしまってね、会社の金を少々流用したんだ。そいつを肩代わりしてもらう礼にちょっと協力を頼まれた。悪く思うなよ?」

 ……協力?

 オリバーさんは借金がかさみ、会社の金を横領したらしい。その補填のためにお金をもらってわたしをさらった。
 ということは、これはオリバーさんの意志ではないということだ。

 じゃあ、誰に指示されたの? なんのためにこんなことをしたの?

「目的を果たしたら帰してやるが……」

 目的。
 それを知りたかったけれど、今はそれ以上に『帰してやる』という言葉に反応してしまった。
 オリバーさんはそんなわたしを見て、にやりと唇を歪めた。

「あんたが俺のことをばらしたら困るな」
「……ん……んん!」

 ばらさない! 黙っているから帰して、と首を横に振る。

「だが、確証が欲しい。ここから出ても、あんたが何も訴えられないようにしておこうか」

 彼はわたしのあごを指で持ちあげ、ブルーグレーの瞳で凝視した。
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