極上御曹司に見初められ、溺愛捕獲されました~一途な海運王の華麗なる結婚宣言~

2.恋の罠 - side ショウ -

『婚約者を助けたければ、カイドウホールディングスの後継者の地位を降りると表明しろ』

 署名のない英文のメモを渡されたのは、十時半すぎのことだった。

『この件を誰かに話したら彼女の命はない。期限は船内時間の昼十二時だ』

 将生ならそこにいるはずだと聞いてやってきた、セレブリティクイーン最上階のプールバー。以前、将生がバーテンダーの真似事をしていたバーだ。

 俺はその紙片の入った封筒を持ってきたバーテンダーを問い詰めたが、彼はバーのカウンターにチップとともに置かれていただけだと主張した。
 ショウイチロウ・カイドウに渡せという別添のメモがあったというから、それも確認した。だが、なんの変哲もない紙にプリントアウトされたアルファベットの羅列にすぎず、差出人の手がかりになりそうな痕跡はなかった。

 刻限まで、あと一時間三十分。

 このメモは本物の脅迫状なのか。質の悪いいたずらなのか。
 鞠香は今どこにいるんだ――。





「将生が?」

 今朝、まだ早い時間のことだ。ジョギングから戻ると弟の秘書の山内からメールが来ていた。
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