極上御曹司に見初められ、溺愛捕獲されました~一途な海運王の華麗なる結婚宣言~
 戸惑うわたしに、近くに控えていた日本人の女性スタッフが控えめに微笑み、小さな声で言った。

「お嬢様、早く染み抜きをしないとお召し物が……」
「そうですね。もう、これはあきらめます」
「できるだけ元どおりになるように力を尽くしますので、我々にお任せいただけませんでしょうか」
「え、あ、はい、でも」
「では、どうぞこちらへ」

 あれよあれよという間に、別室に連行されてしまった。
 そして丁寧に、かつ手際よく、バスルームの脱衣室に放りこまれる。

「う、わー!」

 目の前に現れたのは、ガラス張りのおしゃれなバスルーム!
 しかも、浴槽の横には大きな窓がある。大西洋を眺めながらお風呂に入れるのね。
 窓の外は暗かったけれど、遠くに月がかかっていた。目が慣れたら、星空も見えるかもしれない。

 なんてロマンチック……。
 わたしの泊まっていたシングルルームとは大違いだ。シングルルームにはシャワー室だけで浴槽はない。
 こんな時じゃなかったら、ゆっくり楽しみたいのになあ。

「お召し物はランドリーワゴンにお置きください。のちほど回収させていただきます」
「はい、わかりました……」
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