極上御曹司に見初められ、溺愛捕獲されました~一途な海運王の華麗なる結婚宣言~
 例のメモの文面が脳内によみがえり、平然を装う。この件を誰かに話したら彼女の命はないと書かれていた。

「何か問題があったら遠慮なく言ってください」
「ああ、ありがとう」

 船のクルーに事情を話すつもりはない。だが、突破口を見つけたい。
 どうしたらいい?

「そうだ、頼みたいことがあるんだが」
「なんでしょう?」

 ふと思いついたことがあった。
 迷った時は原点に戻れ。子供のころ父からよく言われていた言葉だ。
 今回の『原点』は何か? ――将生だ。

「待ち合わせていたのは弟なんだが、連絡が取れない。体調が悪そうだったから心配なんだ。彼の部屋の中に入れないだろうか」
「弟さんは一人ですか?」
「私とは別の部屋をシングルユースしている」
「あなたと弟さんのお名前と部屋番号をうかがえますか?」

 俺が答えると彼は電話で上長の支持を仰ぐ。しばらくして通話を切ると、彼は俺を安心させるようにおどけてウインクした。

「No problem. あなたと弟さんの身元と関係性の確認が取れました。緊急事態と判断します。上の者が部屋の前で合流しますが、よろしいですか?」
「もちろんだ。感謝する」
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