極上御曹司に見初められ、溺愛捕獲されました~一途な海運王の華麗なる結婚宣言~

3.メーデー、メーデー、メーデー!

「ん……んん!」

 顔を激しく横に振る。必死に口内で舌を動かしていると、口もとを覆った粘着テープが少しずれた。

「んーっ、んーっ!」

 その隙間から唇を突き出して、さらに粘着テープを押しあげる。
 やった、これで声が出せる!

「お願い、ちょっと待って! わたしに彼と話をさせて。そうしたらあなたが手にする金額の倍、いえ三倍お支払いします!」
「ほう?」

 はがれきらない粘着テープに邪魔されながら、精いっぱいの早口で叫ぶ。
 すると、わたしの顔の両側に手をついて覆いかぶさっていたオリバーさんが止まった。
 借金に困っているくらいだから、お金の話なら少しは聞いてくれるんじゃないかと思ったのだけど、正解だったらしい。とりあえず動きを止めることができた。
 彼の借金がいくらか知らないし、翔一郎さんに出してもらえる金額なのかもわからないけれど……。

「それは魅力的な提案だ」

 オリバーさんがニヤニヤと笑いながら言った。
 ごつごつした指でわたしの頬をなでると、上唇に貼りついた粘着テープを一気にはがす。

「……っ」

 怖い。がくがくと震えてしまうほど恐ろしい。
< 177 / 252 >

この作品をシェア

pagetop