極上御曹司に見初められ、溺愛捕獲されました~一途な海運王の華麗なる結婚宣言~
 でも、少しでも時間を稼がなくちゃ。
 今、何時だろう。もう十一時をすぎたかしら。
 わたしが待ち合わせ場所に現れなかったら、きっと翔一郎さんが探してくれる。

「そうでしょう? 手足はこのままでいいから電話をかけてください。わたしが彼に説明しますから」

 わたしを見下ろして無言で考えこむオリバーさん。
 さすがに簡単には、こんなその場の思いつきの根拠のない『提案』には飛びついてはこないだろう。
 でも、そんなことはわかってる。ただ時間が欲しい。

「だがなあ、もう先方からは手付金をもらっているんだ。ここで寝返るのは商売の信義に反するだろう?」

 オリバーさんがにやりと笑って話しはじめる。
 信義も何も犯罪を犯している人がどの口で言っているのかと思うけれど、ここでオリバーさんを怒らせたらかすかなチャンスが水の泡だ。

「それに今の依頼主は金だけじゃなく、この先の安全な生活も保証してくれているんだよ。遠い国での新しい身元と仕事をな。間抜けにも追い落とされようとしているカイドウ・ファミリーの御曹司に、それ以上のことができるかな?」
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