極上御曹司に見初められ、溺愛捕獲されました~一途な海運王の華麗なる結婚宣言~

5.Your name, please?

 グランドスイートのバスルームからは大西洋が見える。
 ブラインドも付いているけれど、どうせ外は一面の海。のぞける人なんていない。わたしは開放的な気分を味わいながら昼風呂を堪能した。

「あー、さっぱりした。気持ちいいー」

 今、セレブリティクイーンはどのあたりを航行しているのだろう。
 クルーズ四日目の午後。もう北大西洋の真ん中は過ぎたかしら。

「海も空も真っ青……」

 青の世界と対比して、バスルームは白。
 清潔な白い壁に白い床、白い浴槽。一人では持てあましそうなほど広い円形のバスタブは当然のようにジェットバスになっている。

 わたしはバスルームに漂うアロマオイルの芳香を吸いこんだ。
 グレープフルーツ? オレンジかな? 柑橘系の香りが気分をリフレッシュしてくれる。

「用意してくれたエリオットさんに感謝しなきゃね」

 体中を神経質なくらい綺麗に洗ったあと、ようやくゆっくりとお風呂につかる気持ちの余裕ができた。
 できるだけオリバーさんのことを思い出さないように、どうでもいい独り言をブツブツとつぶやきつづける。

「――鞠香?」
「はい!?」

 翔一郎さんの声だ。
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