極上御曹司に見初められ、溺愛捕獲されました~一途な海運王の華麗なる結婚宣言~
「……わたしを翔一郎さんのお嫁さんにしてください」

 それは甘い、甘すぎる罰。
 わたしは翔一郎さんの胸に飛びこんだ。
 契約のためではなく、誰かの身代わりでもなく、ただの光井鞠香として。

「鞠香」

 翔一郎さんの力強い腕に抱きしめられて……気がついたら、唇が重なっていた。

 切なげな表情。低くかすれた声。
 翔一郎さんの熱い吐息を感じて、わたしの体にも火がともる。
 すっかり冷めた湯上がりの熱が別の何かにすりかわって、頬がほてる。

「…………」

 翔一郎さんが肩に流れたわたしの髪をかきあげて、あらわになった首筋をじっと見つめた。

「あ、そこは……」

 耳の下あたりに、オリバーさんにつけられた鬱血のあとがあるはずだ。
 いわゆるキスマーク。不本意だけれど、首筋に刻まれてしまったキスのあと。
 翔一郎さんは眉間にしわを寄せて、しばらくそこをにらみつけていた。そして、おもむろに首筋に顔をうずめる。

「んっ」

 ピリッと鋭い痛みが走った。
 その場所を翔一郎さんが舌を出してなめる。

「上書きした。もう私以外誰も思い出すな」
「……嫉妬してるの?」
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