極上御曹司に見初められ、溺愛捕獲されました~一途な海運王の華麗なる結婚宣言~
「大丈夫か? やはり昨夜――」
「違います! 体の疲労よりも気持ち的に……その。キスマークを見られてしまって」

 エステティシャンは何も言わず微笑ましそうに笑っただけだった。
 でも、わたしはすごく恥ずかしくて、心の中の何かが削られた気がした。この笑顔は、やはりフィッティングの時にキスマークを見つけたサラさんに続いて二人目だ。二度目の打撃。
 明日の結婚式ではサラさんがうっ血の痕をメイクで隠してくれるみたいで、それだけはほっとした。

「そうか」

 翔一郎さんが笑いをこらえたような変な顔をしている。

「もう……」

 誰のせいでと言いたくなるけれど、煩雑なことは全部翔一郎さんがやってくれているのでなかなか怒れない。
 わたしがスパにいる間に翔一郎さんが明日の結婚式の段取りをつけて、ドレス、ブーケ、アクセサリーなどがちゃんと控え室に届くように手配してくれていた。たぶん裏ではバトラーのエリオットさんが大活躍しているはずだ。

「正式な結婚式はいずれ東京で挙げよう。仕事の関係者も多いので大々的に行うことになると思う」

 ケーキスタンドからサンドイッチを取りながら翔一郎さんが言った。
< 226 / 252 >

この作品をシェア

pagetop