極上御曹司に見初められ、溺愛捕獲されました~一途な海運王の華麗なる結婚宣言~
確かにそれまで社会に出て働いたことのない母の稼げる金額はそれほど多くはない。わたしの生活費や学費の大半は父から毎月振りこまれるお金で賄っていると聞いたこともある。
でも、それは父に余裕があるからだと思っていた。会いに来るほどの気持ちは残っていないけれど、責任感だけは強い人だったんだって。きっと今ごろ、父は新しい家族と幸せに過ごしているに違いないって。
「私の想像に過ぎないが、おそらく花野宮氏はきみと母上に強い罪悪感を抱いていたのだろう。だが、愛情が失われたわけではない。お父上は遠くからきみたちを見守っていたはずだ」
「そう……だったの」
「鞠香」
翔一郎さんが席を立って、こちらに来た。ハンカチを取り出してわたしの頬をぬぐう。
あれ、わたし泣いてる……?
「泣かせてしまってすまない。結婚式の前に目が腫れたらリサに怒られる。どうか泣きやんでくれないか」
困ったように懇願する翔一郎さん。
涙と一緒に、子供のころから心に刺さっていた小さな氷の刺がとけていくような気がした。
でも、それは父に余裕があるからだと思っていた。会いに来るほどの気持ちは残っていないけれど、責任感だけは強い人だったんだって。きっと今ごろ、父は新しい家族と幸せに過ごしているに違いないって。
「私の想像に過ぎないが、おそらく花野宮氏はきみと母上に強い罪悪感を抱いていたのだろう。だが、愛情が失われたわけではない。お父上は遠くからきみたちを見守っていたはずだ」
「そう……だったの」
「鞠香」
翔一郎さんが席を立って、こちらに来た。ハンカチを取り出してわたしの頬をぬぐう。
あれ、わたし泣いてる……?
「泣かせてしまってすまない。結婚式の前に目が腫れたらリサに怒られる。どうか泣きやんでくれないか」
困ったように懇願する翔一郎さん。
涙と一緒に、子供のころから心に刺さっていた小さな氷の刺がとけていくような気がした。