極上御曹司に見初められ、溺愛捕獲されました~一途な海運王の華麗なる結婚宣言~
 クルーズの旅の素晴らしさをもっと広げたい、若い世代にも知ってほしいという鞠香の夢。たぶんそれは、家族三人で過ごした最後の夏を心の支えとして生きてきた鞠香の原点なのだ。

「その気持ちだけで十分だ。きみは自分の夢を追ってほしい。そして、いつかそのキャリアを海堂でも活かしてくれないか」
「キャリアを……?」
「ああ。今、海堂グループは海運業から発展したさまざまな分野に事業を拡大している。いずれ旅行業にも進出したいと思っている」

 鞠香が大きな目をしばたたいて俺を見上げた。

「わたしでも役に立てるかしら」
「もちろん。鞠香ならできる。我が社の強みを活用したクルーズ旅行についても考えていきたいんだ」

 腕の中の鞠香の瞳がきらきらと輝きはじめる。
 美しい淑女の鞠香も、かわいらしい恋人の鞠香も俺を夢中にさせるが、生き生きとした鞠香は見ていて心が浮き立つ。

「だが、焦る必要はない。きみがそばにいてくれるだけで私のモチベーションが上がるからな」

 軽い口調で耳もとでささやくと、鞠香はくすぐったそうに肩をすくめた。
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