極上御曹司に見初められ、溺愛捕獲されました~一途な海運王の華麗なる結婚宣言~
 翔一郎さんはホテルに直行せず、遠回りしてニューヨークの街を見せてくれた。
 リムジンの窓から見たニューヨークは、言い古された表現かもしれないけれど人種のるつぼだ。白人、黒人、ヒスパニック、アジア人。人々がせわしなく歩くスピードは東京より速く感じた。

「ニューヨークもいつかゆっくり観光してみたいな」
「ああ……、急かしてしまってすまなかった」
「いいえ、ドライブ楽しかったです」

 バスタブの泡を手のひらにのせる。意外としっかりした泡を楽しみながら、何気なく翔一郎さんに言ったら謝られてしまった。

「本当はもう少しのんびり観光するつもりだったんだが……、我慢できなかったんだ」
「我慢?」
「鞠香にふれたくて」

 うしろから強く抱きしめられる。
 翔一郎さんの素肌の感触と熱に、どきんと胸が高鳴った。
 かすれた声が耳に吹きこまれる。

「なあ、手を動かしたら、やっぱり怒るか?」
「急にどうしたの?」
「急じゃない。さっきからずっと欲しかった」

 突然のそういう雰囲気に恥ずかしくなってしまうけれど。
 わたしの肌もあっという間に熱を帯びた。

「……少しだけ、ですよ」
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