極上御曹司に見初められ、溺愛捕獲されました~一途な海運王の華麗なる結婚宣言~
 わたしは何人もの女性の手によってアクセサリーをあれこれ合わせられ、メイク、ヘアメイク、ネイルケアにネイルアートとなすがままにされてしまっていた。まるで結婚式の前の花嫁さんのよう。

「あのー、わたし、こういう華やかな装いは似合わないと思うのですが。顔も地味ですし、庶民だし、あか抜けないし」

 最終的に、光沢のある濃紺の生地に銀色のラメが入ったイブニングドレスを着せられた。

 まずい。どうやらわたしはこの格好で、さっきワインをかけられて中座したウェルカムパーティーに戻らなければいけないらしい。
 でも、こんな派手なドレスでは衣装負け確定だ。あの日本人の女の子たちにも何を言われるか……。

「そんなことはございませんよ。よくお似合いです」
「いやいやいや……」

 腰まである長い髪はバージンヘアといえば聞こえはいいが、なんのお手入れもしていない天然の黒髪だ。
 わたしは大学時代、アルバイトで貯めたお金で旅行がしたくて美容院にかける金額も最低限にしていた。この件だけでもわたしのいわゆる女子力がどの程度か想像が付くだろう。
< 29 / 252 >

この作品をシェア

pagetop