極上御曹司に見初められ、溺愛捕獲されました~一途な海運王の華麗なる結婚宣言~
 平凡な顔のパーツの中では、比較的くっきりとした二重まぶたの目だけは印象が強いらしい。友人から『鞠香は「目だけ美人」だよね』とよくからかわれる。
 そして、スタイルは人並み。少し胸は大きめだけど、平均ど真ん中の中肉中背。
 いろいろ考えあわせると、わたしは平凡の極みだと思う。

「髪型もどうなっているんです、これ?」

 時間が惜しいからと鏡で確認する隙も与えられず、ひたすらどきどきしながら出来上がりを待つ。

「もう少しですから我慢してくださいね」
「はい、大丈夫ですけど」
「とてもお綺麗ですよ。マリカ様は清楚で気品がございます。芯の強さを秘めた女性――日本の言葉では大和撫子というのでしょうか」
「それは大和撫子に申し訳ないですよ」

 大袈裟なほめ言葉に思わず笑ってしまう。笑い声をこらえるのに腹筋が震える。

「マリカ様、今、目もとをさわりますので、動かないでくださいね」
「は、はい、ごめんなさい」

 それからしばらく無言で顔のメイクが続けられ、肩がこってきたころ、すべての準備が終わった。

「こちらに鏡がございます。どうぞおいでください」
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