極上御曹司に見初められ、溺愛捕獲されました~一途な海運王の華麗なる結婚宣言~
「さすがにすぐには乗ってこないか。そんなところも普通のご令嬢とは違うね」
「は?」

 海堂さんはわたしの手を握ったまま、ゆっくりと歩きはじめた。

「あの!?」
「歩きながら話そう」

 着替えをしていた部屋を出てソファーのあるリビングルームを通りすぎ、アトリウムへつながる廊下に出る。
 廊下にもシックな緋色のカーペットが敷かれている。

「実は今回はプライベートな旅行なのだが、もう噂が回っているようなんだ。海堂の副社長がこの船に乗っているとね」

 確かにパーティー会場で日本人の女性たちがそんなことを言っていたような……。

「私はまだ独身だし、あわよくば私と有利なつながりも作ろうと虎視眈々と狙っている女性もいる。旅の間くらい、そんなわずらわしい目から逃れたい」
「はあ……、それはそうですよね。お仕事じゃないんですもんね」

 地位や権力のある人もいろいろ大変らしい。

「できれば恋人役には仕事や家のしがらみがなく、妻の座を狙う野心もない女性が望ましい。きみはそんな望みはないだろう?」
「えっ、なんでわかったんですか!?」

 と、びっくりしてから腑に落ちた。
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