極上御曹司に見初められ、溺愛捕獲されました~一途な海運王の華麗なる結婚宣言~
 彼とわたしの間は人一人分の隙間も空いていない。

「翔一郎さん?」

 パーソナルスペースが狭くはないですか?

「それに恋人としての付き合いをすると契約しただろう?」

 翔一郎さんはカクテルグラスを持ったまま、ソファーの背もたれにもう片方の腕をかける。
 直接体にふれているわけではない。でも、なんだか抱きしめられているような距離感なんだけど……。

「契約は速やかに履行しないとな」

 甘いカクテルを一口含んだ彼の顔が迫ってくる。

「……?」

 ふわっと彼がおおいかぶさってきた。ほのかにチョコレートのような香りがした。

 翔一郎さんの背後から、柔らかな間接照明の明かり。
 そのシルエットが近づいてきて。
 近づきすぎて、にじんだ。

「……っ!」

 そして、またキス。
 翔一郎さんの舌がわたしの唇を割って口の中に入ってくる。

 口移しで飲まされるカクテル。
 甘い、甘いチョコレートリキュールの味。
 なめらかな生クリームみたいな、とろりとした舌ざわり。

「……鞠香」

 腰に来るようなかすれた低い声。

 なぜこんなことをするの? しかも、どうしてわたしは拒めないの?
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