極上御曹司に見初められ、溺愛捕獲されました~一途な海運王の華麗なる結婚宣言~
 ふたたび目を開けると、翔一郎さんの表情が微妙に変わっていた。
 さっきまでの切迫した顔が嘘のように、余裕綽々な大人の雰囲気をまとう男。

 容姿も家柄もパーフェクト。経済力も権力も将来性もある極上のエリート。

「これ以上、からかわないでください」

 そんな人に突然窮地を救われて、『マイ・フェア・レディ』みたいにお姫様に仕立てあげられ、おまけに熱く口説かれるなんて。

 ……嘘。
 こんなのきっと、甘すぎる罠。
 一夜の夢に違いない。

「なぜからかっていると思う?」

 翔一郎さんの真実がわからない。
 何かを隠している?
 それとも、普段は見かけない地味で初心な女の子がもの珍しかった?

「だって、おかしいです。あなたみたいな人がわたしなんかを相手にするわけがないのに」
「一目惚れかもしれない」
「ありえないわ」
「イブニングドレスをまとったきみは、それくらい美しかった」

 翔一郎さんがわたしの黒髪をすくって、一筋指に巻いた。恋人にいたずらをするように繰り返し髪をもてあそぶ。

「綺麗な人なんて見慣れてるでしょ?」
「そうだな」

 大人っぽく苦笑する翔一郎さん。
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