極上御曹司に見初められ、溺愛捕獲されました~一途な海運王の華麗なる結婚宣言~
 上流階級のお嬢さんたちはもちろん、女優さんやモデルさんにだって知り合いがいそう。たぶんそういう世界に生きている人だ。

「でも、きみはほかの女性とは違う。いつも一生懸命で、純粋でかわいくて」

 うっとりと見とれているような彼の視線が苦しかった。

「いつも……? そういうことばっかり言ってると、いつか刺されますよ」
「ん?」
「うしろからぶすっと」

 翔一郎さんがちょっと笑った。

「刺されるか。熱烈だな」
「だから、もう」

 やめてほしい。
 否定しつづけないと、心臓がときめきすぎて持たない。翔一郎さんの熱いまなざしに流されてしまいそうになる。
 こんなこと、もう絶対ないんだから、一夜ぐらい夢を見てもいいんじゃないかって。

 わたしのそんな考えに気づいたのか、翔一郎さんが急に真剣な顔をした。

「そうそうたるゲストの前で発表もした。誓いの口づけもした」
「…………」
「私たちはすでに婚約者も同然だ。――少なくともセレブリティクイーンの中では」

 契約上の恋人。かりそめの婚約者。
 将来の花嫁の身代わり。

 翔一郎さんのことを好きなわけではないのに、少し涙が出そうになった。
< 50 / 252 >

この作品をシェア

pagetop