極上御曹司に見初められ、溺愛捕獲されました～一途な海運王の華麗なる結婚宣言～

　偽物を演じているだけなのに、物語の中にいるようなシチュエーションにときめいている自分が情けなくて、切なくて。

「この船にいる間は、ほかの男を見てはいけない。鞠香、いいね？」

　まるでわたしに独占欲を抱いているかのような言葉。
　いつか本物の花嫁にはもっと情熱的な目をするのかしら。

「……はい」
「いい子だ。とりあえずそれだけ約束してくれればいい。今は」

　翔一郎さんがくすっと笑った。

「じゃあ、初夜の続きをしようか」
「は……はい!?」

　潤みかかった目から一瞬で涙が引く。
　とっさに翔一郎さんを見上げると、彼はさっきの真剣な視線が嘘のようにいたずらっぽく微笑んでいた。

「もうバトラーもいない。二人きりの夜だ」

　あ、エリオットさん！
　そういえばキスしてる間もいたのかしら!?
　わたしはエリオットさんの存在をずっと忘れていた。
　見回してみても、もう室内にはいない。どうか見られていませんように！

「さあ、寝室に行こうか、私の未来の花嫁？」

　翔一郎さんが軽く抱きしめてくる。
　その冗談めかした口調に、あっという間に理性が戻ってきた。